収納袋大図鑑
大きなテントの中に並ぶたくさんのジジムの収納袋。迫力があるでしょう?
定住地を持たない遊牧民たちは、持てる財産のすべてをウールキリムの収納袋に納めていました。
収納袋の数が多いことが、裕福である証でもあったわけです。
(上の写真はキリムの展示会で撮影しました)
それにしてもまぁ、一口に収納袋といっても、デザインや形の多種多様なこと!
そして、その多くが美しい織り模様で飾られていることに、またまた驚かされます。
お引越しの時には、収納袋をポンとラクダの背中に乗せて、らくらく移動~。
これはなかなか便利です(^_^)
生活道具としてのキリム、遊牧民の暮らしの知恵と豊かな想像力を、ちょっぴりのぞくことができる気がして、私は収納袋 チュアル(Cuval)をじっくり観察するのが大好きなんです。
チュアル
ゴロンとした袋を開くと、このような形に。正面から見えない部分は、シンプルなボーダーだけになってます!
見える部分だけに、特別細かなジジム(Cicim)になってるわけなんですね。なんて合理的!
開いたジジムは敷物にもデコレーションにもぴったり。ガラタバザールでは、このスタイルのほうがおなじみですね。
このジジム&ボーダーキリムの収納袋は、カイセリ、シワス、マラテヤなど、アナトリア中央部で多く使われていたようです。
テントの中を飾る収納袋よりも、もっと日常的にバンバン使われていたのは、縦型で大きく口の開いた収納袋。
かなりの大きさですけれど、これに直接ジャガイモやムギなどの穀物類を入れていたのです。
日本で言うと、ちょうど米俵みたいな使い方ですね。
そういえば、このタイプのチュアルがほとんど同じ大きさで統一されているのは、食料の量を何袋分、、、のように数えていたからかもしれませんね。
キリムのガイド本には、縦横の比が3:4が一般的、とまで書かれています!
アナトリア中央部で多く見られる、右のようなデザインの収納袋の雪の結晶のようなモチーフには、五穀豊穣を願う気持ちが込められているといいます。
もともとは表と裏同じデザインで、上の写真のようにベルトがつけられ、口の部分を縛って閉じるような形でした。
同じデザインの小さなジジムが2枚あるのは、表と裏でつながっていたからなのです。
ところ変わればデザインも違う…
アナトリア北西部のベルガマの収納袋も見事なスマックがみられることで有名。
比較的時代の新しいものでも、素晴らしい織りのものが出てくることが多いのが嬉しいです。
お嫁入りに収納袋を持っていく風習が続いているからでしょうか。。。
ヘイベ
アンティークキリムに比べれば、生活道具としての収納袋はまだまだ情報が少ないのですが、『KILIM TheComplete Guide』という本では、一通りのサンプルを見ることができます。
そこでは、ヘイベ(Heybe)と呼ばれる二艘のサドルバッグも一緒になっているので、ここでもそれに習いましょう。
ロバ、馬、ラクダと大きさはいろいろあります。
背中にかぶせて、左右の袋の部分に、ジジムやスマックなどの凝った装飾がされています。
ラクダ用ではイランのバクティアリ族のものが「キャメルバッグ」としてよく知られていますね。
バッグ・マフラシュ
塩を入れるソルトバッグ。口が狭くなっているのは、ラクダに中の塩をなめられないため。
タンスのイメージに一番近いのは、立体的な形の長方形の収納袋マフラッシュ(Maffrash)。
赤ちゃんを入れてゆりかごにすることもあるのだとか。。
トルコの東北部から、コーカサス地方にかけて見られるスタイルです。
日本の柳行李(ヤナギゴウリ)を思い出すな~。
このカタチ、一枚のキリムのほかに、正方形の2枚の小さいキリムが合わさりますよね。
織りの素晴らしいものは、小さな一片だけでも、けっこういいお値段がついたりするコレクションピースです!
特にアゼルバイジャンのスマック(Smak)織りのものは、見ているだけでもうっとりするような細かさですよ。
この写真は、日本のお部屋で実際に収納袋として使っている様子。
口のところにザクザクと紐を通して、軽くたたんでフタが出来るように工夫しています。
他に、逆さにしてテーブルにかぶせる使い方もおすすめです♪
ヤストゥク
最後に、ヤストゥク(Yastuk)もご紹介。
枕の意味ですから、収納袋ではないかもしれませんけれど、袋状のものということでいろいろな用途に使われていたようです。
お部屋のアチコチに、ゴロゴロと置いてあるのがトルコ風!
ソファのひじあて代わりに置かれた枕のピロー。
ガラタバザールでは、チュアル、ヘイベ、マフラシュ、ヤストゥク、こちらの記事で紹介した商品のお取り扱いもありますので、ぜひチェックしてみてくださいね。
⇒生活道具としてのキリムはこちらから
万能とも思えるほどの遊牧民のキリムを使う技は見事というほかありません。
実はまだ、本当の遊牧生活の人々に会いに行ったことはないのです。
羊とラクダとキリムと、一緒に暮らす人々をいつか訪ねてみたいですね。
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