キリムについて

遊牧民が織る平織りの敷物「キリム」について、さまざまな側面からご紹介しています。

キリムの織りの技法とその名前

キリムとじゅうたんの違い

縦糸に横糸を織り込んでいく平織りの織物をキリムと呼びます。この縦糸に横糸を織り込んでいくキリムの技法は、つづれ織り・繻子(しゅす)織りとも呼ばれます。一方、縦糸と横糸に結び糸(パイル糸)が加わり、毛足のある立体的な作り構造をしているものをじゅうたんと呼び、キリムとは区別されます。ペルシャ絨毯、中国段通、ギャッベは、じゅうたんに属します。
キリムは、毛足のあるじゅうたんに比べると薄手でクッション性は低く、さらりとした質感が特徴です。薄手のために、小さく折りたたむこともできるので、使わない時には、押入れやクローゼットに収納することができます。厚みのないキリムは、敷物はもちろんのこと、家具やソファーのカバーリングに、またペストリーなど様々な用途に使えます。

キリム 平織り
【キリム】
平織りのため、パイルがなく、薄いのが特徴です。
じゅうたんのようなクッション性はありません。

絨毯 パイル織り
【じゅうたん】
毛足(パイル)がある立体的な作り。

キリムの織りの技法

一般的な一口に平織りといっても、キリムには様々な技法が用いられています。ここではそれぞれの織りの特徴をご説明します。

平織り(つづれ織り・繻子織り)


キリムの基本的な織りの技法で、縦糸に横糸を交互に通して、前後に交差させ、しっかりと詰めていく技法です。縦糸を隠すように覆うので、表面に見える糸や模様は主に横糸です。

スリット織り

スリット織り
アナトリア(トルコ)のキリムの特徴として、色の切り替え部分が縦に切れたようになっている織りの技法があります。これはモチーフを描く色の糸を切り替えるときに、前後の糸を交差させないためにできる隙間で、スリット(キルキット)と呼ばれています。
トルコのキリムでも、産地によってスリットの現れ方は違っていますが、中には指が通るほど開いているものや、全体がレース網のように全体にたくさんのスリットが入ったキリムもみられます。これは質の良し悪しではなく、織り方の特徴のひとつとして了承してください。

スマック


スマック(sumak somak)は、アゼルバイジャンの古い都市シュマッハ(Shemakkha)に語源を持つといわれています。
基本のつづれ織りにさらにもう一本新しい横糸を織り込んでいく手法です。一般的には、新しい横糸で縦糸1~2本を表から裏へ絡めとって、織られていきます。縦糸と横糸にもう一本糸をたす形で織り込んでいくため、通常のキリムよりも比較的厚みのあるキリムとなります。
スマック織りで織られたキリムは、通常のキリムよりも何倍も手間と時間をかけて織られているため、キリムのなかでも価値あるものと考えられています。

ジジム


つづれ織りにもう一本、横糸を使って、縦糸に絡ましながら、模様を織り込んでいく方法。
ジジムで作られた模様の部分は、一見、織りあがったキリムに後から、針を刺して刺繍しているように見えますが、あとから刺繍をしているわけでなく、織る際に縦糸に横糸をもう一本追加して、模様をつくっています。
トルコで収納袋として使われていたチュアルというキリムの模様や、ボーダーキリムの模様に多様される手法です。

ズィリ

ズィリ
ジジムと同じようにつづれ織りや均等平織りの地に、もう一本、横糸をたして、模様を織り込む手法。縦糸を3~5本飛ばして織り込むところがジジムと異なり、縦糸が浮き出るように見えます。

ジャジム

ジャジム・ガジャリの織り目
縦糸は染めていない糸を使い、横糸に色のある糸を使う他の織りとは異なり、何色か色のついた縦糸を使い、単色の横糸で織っていく手法。
縦糸の色が表にでることで、縞の模様ができます。
本来敷物として作られるキリムには、この手法がもちいられることはなく、この手法をもちいて織られたキリムは、テントの日除けや家具のカバーなどに使われました。この手法で織られたキリムは、薄手でやわらかなつくりをしています。
イラン東北部のウズベキスタンにかけて住むウズベク族のキリムによく見られる手法です。

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