キュタフヤ陶器について
ブルーモスクやトプカプ宮殿を飾る青いタイルが作られた15-17世紀、トルコ陶器産業の中心は、イズニック(IZNIK)という町でした。現存する博物館の陶器のほとんどは、イズニックで焼かれたもので、いくつかの窯はブランドとも呼べるネームバリューで、オスマン王朝の保護を受けていました。
18世紀になると、イズニックでは装飾用のタイルの生産が中心になり、代わって皿やつぼなどが作られるようになったのが、お隣の町キュターヤ(KUTAHYA)です。キュターヤが陶器を作るための良質な土が取れる場所に、より近かったためのようです。キュターヤの町に近づくと、白い粘土質の崖がたくさん見えてきて、陶器の町に来たなーという印象を受けます。まだまだイズニックタイルの名前に比べると、キュターヤの知名度が低いのが残念です。
ホテルの部屋で予習!参考書は「IZNIK」歴史やデザインなどスーパープロフェッショナルに詳しい本。
トルコの陶器デザインについて、年代順に簡単に見てみましょう。
1480-1520年ごろのデザイン
オスマン朝初期。呉須の藍だけを使った、最も古いデザイン。日本でいえば、初期伊万里のような感じでしょうか。そういえば、トプカプ宮殿には、たくさんの古い日本の陶器が展示されています。スルタンたちのコレクションを研究して、アーティストたちはアイデアを膨らませたのでしょうか。
全体の印象は素朴ですが、点描のようなタッチで塗りつぶされている部分の精密さがすばらしい!
モチーフは一般的にはペルシャから伝わったと思われるアラベスク調のリーフ柄が主流。
1520-1540年ごろのデザイン
日本では、タコ柄にあたるでしょうか。(トルコのほうが繊細な感じですね)。なめらかな曲線のこの渦巻きをごらんくださいませ!もちろん、簡単な下書きはありますが、何年も筆を持っている熟練したアーティストでないと描けないなめらかな曲線です。
このデザインは”Tugrakas Spiral Style(トゥーラカシュスパイラルスタイル)”と呼ばれ、現在でもショップでは人気があるデザイン。同じ時代に、ぶどうのモチーフや葉をアレンジしたモチーフなど、さまざまなパターンが開発されていました。青と白だけをアレンジして描かれたこの時代のデザインは、総称して”Baba Nakkas Style(バーナカシュスタイル)”と呼ぶそうです。(日本でいうと××派みたいな)
1540-1560年ごろのデザイン
新しくグリーンとあずき色の釉薬が入ってきました(おそらく中国から)。デザインも影響を受けたのでしょうか、描かれているモチーフが力強く男性的な感じです。高貴なとか気高いという形容が似合いそう。すごく大人な雰囲気の色調。
オスマン王朝の象徴であるチューリップが登場してくるのもこのころからです(トルコのチューリップはオランダに渡る前の野生種なんです)
1560以降・オスマン王朝最盛期フラワースタイル
イズニック陶器の最盛期。赤が加わり、華やか。豪華!オスマン朝のルネッサンス!! 輝く釉の色、微妙な筆圧から生まれるグラデーション、優雅な曲線。みているだけでうっとりします。
この時代、10年ごとにめまぐるしくスルタンが入れ替わり、それぞれの好みが繁栄されたデザインが採用されたようです。全体としてはチューリップ、ヒヤシンス、カーネーションなどの花を、アラベスク風にアレンジしてあるのが特徴です。
17世紀に入ってからは、中国磁器の絵柄を模倣して鳥やトラが描かれ、ユーロアジアというかオリエンタルというか、さまざまなデザインが現れます。でも、イズニックでは、ついに硬質な磁器が完成することはなかったんですね。今でも、これらの陶器はお料理をのせるお皿ではなく、壁にかけて楽しむ装飾用です。
現代のキュターヤ陶器・トラディショナルデザイン
私の部屋に飾ってあった一枚のお皿、15年前に初めてトルコへ来たときにキュターヤで買ったものなのですが、今回「あ、おんなじ!」とすぐわかるお皿を見つけました。お店の場所などははっきり覚えてなかったのですが、裏のサインで私が持っているお皿と同じ店だとわかりました。
それほどハイクオリティではありませんが、いわゆるキュターヤ陶器ってずーっとこんなイメージだったんですね。素朴な絵付けが、あたたかい感じです。水色や黄緑が使われているアラベスクの色あいがきれい。
21世紀発!カラフルなミレニアムデザイン
さまざまな色のハッピーなデザイン!20世紀末に新しく登場したミレニアムデザインです!カラフルできれいなので、店先でもぱっと目に留まり、今では大人気!
でも残念ながら実は100%の手書きではなくて、輪郭の黒い線をスタンプして色だけ後から塗ったものも混じっているんですね?。今ではほとんどの陶房で作られているデザインなので、比較的手に入りやすいです。といっても、やはり細かくチェックしてしまうとあんまり数がそろわず、ちょっぴりご紹介です。
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